搭乗手続きを済ませたあとも、私はどうしても気にかかったままだった。
彼はとても優しく、非は私にあるにもかかわらず、優しかった。今までこんなに優しい彼はみたことがなかった。
彼が私の肩に手が触れる。「ゾクッ・・」っとした。ヘンな言い方だが、この手で他の女を抱いたのかと思うと・・・吐き気がした。でも・・・・私だってこの体に他の男を受け入れた。同罪だ・・・いや・・私のほうが・・・。
彼が優しく話す言葉も私の耳には入っていなかった。

ぴーぴー
と・・ポケットベルの音がした。
私は彼から、離れた。
トイレに入りポケベルを見た。
「・・連絡しろ」と言う短いメッセージ
私はすぐ、公衆電話で電話をかけた。
「・・・今どこ・・・もう・・船乗った?」と会社の上司からのこえ。私は
「・・まだ・・」と答えた。
「・・いま・・・・シンワート倉庫の前にくるまとめてるから・・・」といった。わたしは、
「・・それは・・どういう意味?」と聞いた。
「・・・そのまま来い・・・」といった。
私は、電話を置くとそのまま走り出した。
荷物も・・すべて投げ出して・・・・


シンワート倉庫の前にいつもの車があった。
助手席のドアは開いていた。
私は飛び乗るとドアを閉めた。
振り向く事もせずに・・・
車は・・走り出した。夜のまちを・・・

無言で走りつづけた。

船は出港の時間となり・・・

彼は一人・・・島へ・・・旅立った。
私の荷物を持って・・・


事の重大さに私は凄く苦しくなった。

かれが携帯電話で、私のかれと船の上からやり取りをしている。

言葉の端橋に・・・2人の男の・・考えが・・分かる。どちらも私の事を大事に思っているのが分かる。
重く苦しくソシテ、逃げ出したい気持ちのまま、夜を明かした。

有給をとっていた。
上司は私を自宅の駅まで送ってくれた。

「じゃァ・・明日会社でナ」
「はい」
午前5時・・・別れた。


そのまま始発に乗り私は・・茨城の大洗海岸へむかった。

私のポケベルは一日中なりつづけた。
島にいる彼から・・会社の上司から・・親友から・・ソシテ・・横浜に住んでいる先日ネルトンで知り合ったかれから・・・。

すべての連絡を拒絶した私は一人・・海を見にいった。
このまま・・進んでいけば・・・楽になれるのだろうなぁ・・・これ以上傷つけることなく傷つくことなく・・・
終わりにできるのだろうなぁ・・・と。

その日の海は荒くて・・・
その日は天気が悪くて・・
今から死のうとする私には、もってこいの感じであった。
すこしづつ海に足を入れていく・・・
ひざぐらいまでつかる・・・。冷たい雨が降ってきた。
雨を受けている。
涙なのか・・・雨なのか・・・分からない・・・
ただ・・・・もう一度だけ会いたいなァと・・・・
もう一度だけ・・・・

それは・・その3人の男ではなく・・・私が一番好きだった男・・・高校のときに付き合ってずっと思いを寄せていた男・・・・の顔だった。
私は竜ちゃんのことを思い浮かべた。
会いたくて会いたくて・・たまらなかった。

こんな立場になっても好きだったんだと思うと・・胸が痛くて・・・。


その夜・・私は東京に戻った。

戻る電車の中で・・・
すべてを清算しようと思った。
私は・・・・まだ、、忘れられない・・・。だから・イツモまっすぐ思いを貫く事ができなかったんだと・・・感じた。
人の気持ちばかり・・・考えて・・・自分の気持ちをはっきりいえなかった。

私は・・・私で・・・私が思うことをすればいいのだと・・・気が付いた。

ごめんなさいを・・100回言っても足らない事をしてしまった。
けじめをつけようと・・・・思った。
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